車部品の軽量化に対応

 線材加工機は線材に塑性加工を施し、目的の形状に仕上げる各種機械。加工された素材は自動車や工作機械、建築物など幅広い業界で活用されている。最近では、加工機へのニーズとして加工対象物(ワーク)の加工品質の安定化への要求が高まっている。加工機メーカーの中には、線材を加工する前に線材の曲がりを矯正する矯正ロール機を加工機のラインに組み込み、加工品質を高めているところもある。 <日刊工業新聞 2023年2月3日掲載>

 線材加工機は多種多様にあり、各工程、用途に応じて活用されている。丸線を上下のロールを通して加工する圧延ロール機は複数のロールを経由することで、さまざまな線の細さに対応する。また線材を細く引き延ばす伸線機は、より細く、複雑な断面形状に加工できる。ほかに曲げ加工を施すワイヤフォーミングマシンや鋼線を撚(よ)る撚り線機、加工した線材を巻き取る巻き取り機などがあり、これらの機械から生み出される線材は幅広い業界を根幹から支えている。

 線材はねじやバネ、ボルトといった機械要素部品のほか、自動車部品や建設物、電線など、さまざまな用途で活躍している。中でも自動車は主要な用途先の一つ。エンジンや駆動系、足まわり部品など、自動車部品の多くに線材が用いられ、なくてはならない存在だ。

 そんな自動車業界では、先行きが不透明な状況が続く。日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)によると、2022年の新車販売台数は、前年比5・6%減の420万1321台となった。半導体不足を受け、自動車業界各社が減産や生産調整を行ったことが影響を及ぼしているとみられる。

 こうした経済状況であるが、自動車の低燃費、軽量化への要求はますます高まっている。自動車部品の軽量化に伴い、加工機も、ワークの細径化や品質の安定化が求められている。

 線材をより細くすることが望まれる分、強度を高める必要がある。このため超高張力鋼板(超ハイテン材)などの高強度材に対する加工ニーズも増えたが、このような素材は硬く、もろいため扱いが難しく、材質ごとに加工設定を変える必要がある。メーカーでは、高強度材の材質に応じて加工機のライン内の設備を提案するなどの対応をしている。

線材の矯正で歩留まり向上

 また加工したワークの品質は、線材内部の残留応力をいかに取り除けるかがカギを握る。残留応力があると、線材が金属疲労を起こして製品品質の低下につながる場合がある。残留応力を下げるためには、加工する前に線材の曲がりを矯正し、線をまっすぐにすることが重要視される。あるメーカーでは、線材の矯正作業を、モーターで数値制御し、ローラーの圧力を自動で調整する矯正ロール機を加工機のラインに組み込んでいる。こうした取り組みによって、歩留まりを向上し、安定した加工品質を実現している。

 線材加工機は線材に塑性加工を施し、目的の形状に仕上げる各種機械。加工された素材は自動車や工作機械、建築物など幅広い業界で活用されている。最近では、加工機へのニーズとして加工対象物(ワーク)の加工品質の安定化への要求が高まっている。加工機メーカーの中には、線材を加工する前に線材の曲がりを矯正する矯正ロール機を加工機のラインに組み込み、加工品質を高めているところもある。