T溝は何のために彫られているの?
T溝とは、溝の底面が広くなっている溝のことを言う。さまざまな工作機械のテーブルに加工が施され材料や治具の固定に利用されるが、プレス機械においてはスライド下面およびボルスタ上面にT溝が設けられており金型の固定に利用する。
図1は、T溝を利用しボルトで金型を固定している状態である。T溝にTナットを挿入しボルトで金型の座面を固定する。またはボルトの代わりに油圧クランプで金型を固定する方法もある。T溝を利用した金型固定の利点は、スライド、ボルスタの全長に渡りT溝加工が施されているため、金型の幅に影響を受けず位置合わせが容易な点である。
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図1 T 溝を利⽤した⾦型の固定
T溝は、JISで規定されている。図2に工作機械におけるT 溝サイズおよびボルトのサイズを示す。また、プレス機械によってT 溝のサイズ
は異なる。よって適合するT ナットおよびクランプユニットも異なるため金型段取りの際は事前に適合するものを準備する必要がある。
清掃の有無で金型へダメージ&段取り替えに支障も
先に、T 溝の利点について述べたが、T 溝を使用するにあたり注意したいのが溝の清掃である。加工によっては細かな抜きかすなどがボルスタの溝に溜まることがあるが、上面からでは死角となる部分もあるため非常に掃除しづらい。しかしながら金型段取り替えの際に抜きかすの清掃が不十
分であると、抜きかすを巻き込んだ金型固定をしてしまい溝を傷つけることがある。そうするとTナットの滑動が悪くなり段取り替えに支障をきた
し、また直すことも困難である。T 溝用のスクライバなどで十分に清掃し常に良い状態を保つ必要がある。
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図2 T 溝およびボルトのサイズ
執筆者:北陸職業能力開発大学校 生産技術科講師 角 有平