クランク角度を考えるのはどんなとき?(上死点、下死点)
上死点= 0 度、下死点= 180 度
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図1 クランクプレスのサイクル
プレス機械には、機械式や油圧式など多様な形式がありスライドを上下運動させている。その中で特に利用されている割合が大きいものが機械式の往復スライダクランク機構を用いたクランクプレスである。図1 はクランクプレスの1サイクルの簡略図である。
図1の左は、スライドが最も高い位置にある。この状態を「上死点」と言い、クランク軸の角度で表す際には「0 度」と表現する。また、逆にスライドが最も低い位置を「下死点」と言いクランク軸の角度は「180度」と表現し、この「上死点」と「下死点」のスライド上下運動の距離を「スト
ローク長さ」という。図1 のとおりクランク軸は時計回りに360 度回転すると考えるのが一般的である。またこれらの角度は、プレス機械の角度表
示計にも表示されオペレータも常に確認できる(図2)。
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図2 ⾓度表⽰計
この角度表示計は、オペレータが金型の試し打ちや金型段取りを行う際に使われる。主に、金型段取り時にスライドの下死点位置を把握するために使われるが順送型の試しうちでは、ストリッパプレートが材料を抑え始めるタイミング(角度)や材料の送り装置の送りが発生する角度、またリリースする角度、パイロットピンが入る角度、抜ける角度など確認することもできる。
加工に必要な加圧力はあるか
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図3 下死点上の高さと加圧力の関係
クランクプレスは、機構の特性上ストロークの位置つまりクランク角度によって加圧力が変化する。スライドが下死点に近づくほど加圧力は高くなり理論的には、無限大の圧力となる。
よってクランクプレスでは、下死点上の位置(能力発生位置)を決め、能力(kN)を表示しているのである。例として図3は、800kNプレスの
下死点上の高さと加圧力をグラフにしたものであるが、このプレス機械は、下死点上の高さ5㎜を能力発生位置として800kNの加圧力を得ている。
しかし、ストロークの位置が高くなるにつれ加圧力は低下することもグラフからわかる。プレス加工では、製品の加工に必要な荷重が、プレス機の加圧能力に収まっていることはもちろんであるが、加工開始するスライドの下死点上の高さが高い場合、加圧力不足となりえるため注意が必要である。
執筆者:北陸職業能力開発大学校 生産技術科講師 角 有平