最大停止時間とは
安全確保に必要!「最大停止時間」
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図1 プレス機械の仕様プレート
皆さんの職場にあるプレス機械に仕様が明記されたプレート(図1)が張り付けられている。その中に「急停止時間」「最大停止時間」と書かれた項目があるのだが、あまり気に留めていないかもしれない。
しかしながら、安全装置が付いているプレス機械なら無条件に安全作業ができるのではない。自動車に装備されているエアバッグもシートベルト
の着用なしでは、エアバッグが作動しても適切な効果は得られない。同様に、プレス機械の安全装置も必要な機能が保証されることが前提で安全が確保されるのである。
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図2 サーキットとプレス機械の上下運動
プレス機械は、上死点と下死点を往復運動する時、図2のように上・下死点では、車がU ターンするように速度減少し、中間点において最高速度で運転されている。まさしく「気を付けよう、車はすぐに止まれない」の標語のように、上死点から下死点に向けて動いているプレス機械のスラ
イドがすぐには止まれない。そのためプレス作業中(スライドが下降している)に両手操作ボタンから手を離して金型に手を伸ばした時に、金型に到達する前にスライドが停止することが求められる。すぐには止まれないプレス機械のスライドが停止するまでの時間を「最大停止時間」と言う。
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図3 車の空走・制動距離
「最大停止時間」は、自動車教習所で習った図3の空走・制動距離の考え方と同じである。プレス機械に置き換えるならば、電気的遅れ時間⇒押しボタンから手を離すことで異常検知してクラッチ電磁弁が働くまで機械的遅れ時間⇒クラッチ電磁弁(ブレーキ)が起動してプレススライドが停止するまで押しボタンから手を離してからプレススライド停止するまでの時間を「最大停止時間」とし、
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図4 車の空走・制動距離 -
図5 急停止時間の測定の実際
最大停止時間=電気的遅れ時間+機械的遅れ時間
と表す(図4)。スライドが惰走している時間を
急停止時間=機械的遅れ時間
と表す。図5の急停止測定装置の使用状況を示す。
執筆者:塑性加工教育訓練研究所 代表 小渡 邦昭